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バックナンバー 11月28日号  11月21日号  11月14日号  11月7日号

11月28日号

  「レーガノミクス」と「トランプノミクス」の似ている点と違う点

記事内容


 米トランプ次期大統領の経済政策は「トランプノミクス」と呼ばれている。そこで、過去(1981年2月)レーガン元大統領が打ち出した「レーガノミクス」と何が似ていて、違うのか検証してみた。まず似ている点は、「強い米国の復活」、「大幅な減税」と「大胆な規制緩和」の3つ。次に大きく違う点は、レーガノミクスが当初歳出削減の「小さな政府」であったのに対し、トランプノミクスはインフラ投資の拡大による「大きな政府」であることだ。貿易については、似た面と違う点がある。レーガン氏は、日本車の輸出規制を要求する一方でカナダと自由貿易協定の交渉をした。これに対しトランプ氏はTPP(環太平洋経済連携協定)とNAFTA(北米自由貿易協定)の見直しを主張している。さらに、市場の受け止め方は、レーガノミクスが当初“呪術経済政策(ブ-ドゥー・エコノミー)”と揶揄された。しかし、トランプノミクスは期待感の方が先行している。これは、当初のレーガノミクス(レーガン政権は82年8月から軍事支出による財政拡張に変更)にはなかった「財政出動」があり、1930年代の大恐慌脱出時におけるルーズベルト元大統領の「ニューディール政策」を思い出すからだろう。いずれにしても、「トランプノミクス」がパラダイムシフトでデフレ時代の終焉を告げることに期待したい。

  


11月21日号

  「ニューディール政策」、「レーガノミクス」と「トランプノミクス」

記事内容


 米トランプ次期大統領は、来年1月20日の就任から100日間で、米国経済再生の道筋をつけるとしている。この「100日間計画」は、①老朽化した道路や橋、トンネルの改修に巨額のインフラ投資(5000億ドル:約50兆円)による財政出動、②法人税減税など大胆な減税政策、③金融業界などへの規制緩和(「金融規制改革法」 ドッド・フランク法の撤廃?) ― 等が柱になっている。こうした政策は、「トランプノミクス」と呼ばれているが、過去の(1)ルーズベルト大統領(1933~45年)の大規模な財政出動(公共投資)による「ニューディール政策」と、(2)レーガン大統領(1981~89年)の大胆な減税と規制緩和の「レーガノミクス」 ― の2つを組み合わせたものともいえる。その類似性は、政策の“パラダイムシフト”だといえる。そしてその効果は、(1)が大恐慌に伴う米経済低迷の脱出に成功、(2)がその後の「強いアメリカ」の復活のキッカケになった。サマーズ元財務長官の世界的な「長期停滞論」は、中央銀行による限界を唱え、財政出動の必要を指摘していた。こうした中の「トランプノミクス」は、日本に続く金融緩和+財政出動の“ポリシーミックス”となる。日米の政策がこれで「観音開きになった」(浜田内閣官房参与)との言葉の意味は、大きく重いように思う。

  


11月14日号

  “ハイパー・ポピュリズム(大衆迎合主義)”に歯止めはかかるか?

記事内容


 最大のイベントであった「米大統領選挙」(11/8)が終わった。そろそろ、2016年を総括する時期に入るが、「今年を象徴するキーワード」の一つは、“ハイパー・ポピュリズム”ではないかと思う。「この言葉はオバマ政権のホーマッツ国務次官の命名で、国民が近視眼的になり、政治家も安易に対応することを指す」(9月の竹中平蔵氏の講演より)という。そういえば確かに、6月の“Brexit(英のEU離脱選択)”や、11月の米大統領選挙における“トランプ現象”などが、直ぐ思い当る。この他、フィリピンのドゥテルテ大統領の登場、そしてトルコのエルドアン大統領や中国の習近平国家主席の強権発動なども、同じ流れの動きだろう。竹中氏は「こうしたポピュリズムの背景には、フォールト・ライン(断層)が出来てしまったことがある」、と指摘していた。これは直ぐに解決できるものではなく、構造的な問題だということになる。となれば、今後もイタリアの憲法改正を問う国民投票(12/4)、米大統領就任式(1/20)以降の政策具体化とTPP(環太平洋経済連携協定)の行方、オランダの総選挙(3/15)、英国のEU離脱通告(3月末まで) ― といった、イベントリスクがまだ続くということかもしれない。この“ハイパー・ポピュリズム”に歯止めがかかるか、加速するか、2017年は「試金石」となろう。

  


11月7日号

  「29年度税制改正大綱」にサプライズを期待していたが…

記事内容


 年末恒例の「税制改正」が話題になり始めたので、宮沢自民党税制調査会長の話(10/27)を聞いてきた。自民党の税制調査会は、11月21日から具体的な作業を開始し、政府税制調査会との調整を経て、12月中旬に与党としての「29年度税制改正大綱」を取りまとめる予定だという。中での目玉は、「所得税法」の改革のようだ。女性の社会進出を妨げている「103万円の壁」(夫の配偶者控除を受ける年収制限)と「130万円の壁」(妻の年収がこの水準を超えると年金や健康保険の負担が生じる)の見直しについては、早急に結論を出したいとしていた。ちなみに、配偶者控除については現在150万円への引上げが議論されている。この他、「給与所得控除」、「年金控除」、「ビール税の統一」、「研究開発減税」-等も、来年度での見直しは難しいような印象であった。筆者が期待していた、①金融庁の要望でもある「株式の相続税評価額の100%→90%への引き下げ」や②証券業協会が要望している「子供NISA(少額投資非課税制度)の拡充(受け取り年齢18歳→12歳の引き下げ)」 ― などは、一言も触れられることがなく、正直ガッカリした。「もし①の案件が実現するようなら、個人投資家に与えるインパクトはそれなりにあったのに・・・。残念。」(独白)。

  


チーフグローバルストラテジスト
中井裕幸(なかい ひろゆき)

同志社大学法学部卒。日興證券入社、同投資情報部長を経て東海東京証券入社。2000年東海東京調査センター投資調査部長兼チーフストラテジスト、2003年取締役就任。2009年専務取締役就任、現職。入社以来一貫して調査・情報部門に携わる。日本経済新聞を始めとする各紙、電子メディアにも寄稿多数。
著書は、「サブプライム 逆流する世界マネー」(実業之日本社)