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バックナンバー 9月18日号  9月11日号  9月4日号  8月28日号

9月18日号

  「トンネルの出口」がまた遠のいた?

記事内容


 米FRB(連邦準備理事会)の出口戦略に影響を与える様々な動きがここ相次いだ。それは、①ハリケーン「ハービー」がテキサス州に大きな被害(最大1900億ドル)をもたらした、②このため、9月末が期限であった政府債務上限問題が、利上げ時期とされる12月中旬(FOMCは12/12・13)まで先送りされることになった(9/8)、③NY連銀のダドリー総裁が「(ハリケーン被害で)次の利上げの具体的な時期を判断するのは早すぎる」と発言(9/8)した ― などがそうだ。さらに今後は、混迷するFRBの人事問題も大きな影響を与えることになろう。というのは、FRB重鎮のフィッシャー副議長が突如辞意(来年6月任期だったが、10月中旬に辞任の予定)を表明(9/6)したからだ。トランプ大統領は、既に元財務次官のクオールズ氏を次期副議長に指名(7/10)しているが、上院の承認が遅れている。FRBは、来年2月で任期が切れるイエレンFRB議長の後任人事も本格化する。しかし、次期FRB議長で最有力候補であったコーン国家経済会議委員長は、先のトランプ大統領の白人至上主義的発言を批判して選外になったといわれる。FRBの正副議長を含む理事のポストは7席あるが、既に3席が空席という異常事態だ。これらにトランプ政策を擁護するような人が選ばれると、利上げを含む金融政策の出口はまた遠のくことになる?

  


9月11日号

  『床に落ちた短剣』を拾え !?

記事内容


 足元の投資環境では短期的な底入れを示唆するものがでてきた。それは、①大型ハリケーン「ハービー」(8/25~30)が米国での政治リスク(予算編成、債務上限問題など)を一旦棚上げさせることになる、②懸念された北朝鮮の「核実験」が実施(9/3)され、建国記念日(9/9)通過で地政学リスクが一巡する、③8月の「米雇用統計」(9/1)の内容がマイルドで、FRBのバランスシート調整や追加利上げが差し迫ったものでなくなる ― などがそうだ。この間の日本株は、テクニカル的に①円/ドル相場がフシ目の108円/ドルを割れていない、②200日移動平均線(日経平均)が下支えしている、③6月の高値(同)から▲1038円の下落(8/29安値)をしている ― などが、サポート要因になっている。しかし、これで今回の調整が一巡したとみるのは早計だろう。というのは、トランプ政権が①NAFTA(北米自由貿易協定)の見直し交渉を始め、大統領自身も②米韓FTA(自由貿易協定)の破棄や、③中国やロシアを念頭に、北朝鮮と取引する国との貿易停止検討のコメントをしているからだ。ムニューシン米財務長官のドル安容認発言(8/31)も、今後の為替市場を見る上で重要なポイントになろう。このため9~10月相場は、ボラティリティが高くなるため、シートベルトが外せない。ここは、「床に落ちた短剣」をゆっくり選別して拾ってゆこう。

  


9月4号

  9~10月のマーケット版“関が原”は短期決戦か?

記事内容


 筆者の好きな司馬遼太郎の名著を映画化した「関が原」を観た。時は、安土桃山時代の慶長5年9月15日、美濃国の関が原を主戦場として東西合わせて20万近い兵力が激突した戦国最大の合戦が舞台だ。「正義とは何か」や石田三成と徳川家康にみる「リーダーとしてのあり方」も、大きなテーマになっており、一味違った内容であった。さて株式市場においても、9月は今年最大の「ブル(強気派)とベア(弱気派)の戦い」が待ち受けているように思う。米国での予算編成に絡む「債務上限問題」の浮上(期限9月末?)と中央銀行の金融政策の変更(9~10月?)、一旦下値に届いたとみられるドル相場の行方(対ドルで1.2ユーロ、108円をブレイクのリスク)、季節的な需給関係の悪化(10月投信、11月ヘッジファンド決算月前) ― などを背景に、ボラティリティが高まりやすいということだ。これまで、「突然の雷雨に御用心」、「落ちてくる短剣を掴むな」としてきたが、9~10月はそろそろ「床に落ちた短剣を拾え」という、メッセージに変えてゆきたいと思う。関が原の戦いは、わずか6時間で決着をみた。今回のマーケット版“関が原”も、メインシナリオは17年春のケース(短期調整)をプランAでイメージしている。しかし、問題がこじれた場合に備え、2015年秋のケース(より深い調整)をプランBとして頭に入れておきたい。

  


8月28日号

  孤立化し始めた米トランプ政権を考える

記事内容


 バージニア州で発生(8/12)した白人至上主義者と反対派による衝突を巡るトランプ大統領の発言は、政権の今後を占う上で、大きなエポック・メイキングになったとみられる。それは、①ライアン下院議長等共和党の重鎮から批判(8/15)が出たこと、②大統領助言組織から経済界トップの辞任が相次ぎ、同組織が解散(8/16)に至ったこと、③政権の右派支持母体の中心であったバノン大統領上級顧問を更迭したこと(8/18)だ。特に、次期FRB議長候補といわれるコーン国家経済会議委員長の辞任説(8/17)が流れた時の市場の動揺は大きかった。ビジネス・フレンドリーな政権という大きなバック・ボーンが揺らいでいることは、やはり看過できない動きだ。もうじき、米国議会の夏休みが終わる。ちなみに、下院は9/5~14に開かれ、1週間の休暇後9/25から再開する。上院は9/5~20に開かれ、9/21・22休会後9/23から再開する。まず、本予算を組むことは日程上無理なので、暫定予算を優先する。オバマケア修正案や税制改正案など他の議案は先延ばしになるとみられる。ここに、10月初めに限界を迎える債務上限問題が加わることで、1枚岩でなくなったトランプ政権に対する不透明感は更に深まったといえる。「弾劾」、「辞任」、「米憲法修正25条」などのシナリオも、あながち無視できなくなったのかもしれない。

  


チーフグローバルストラテジスト
中井裕幸(なかい ひろゆき)

同志社大学法学部卒。日興證券入社、同投資情報部長を経て東海東京証券入社。2000年東海東京調査センター投資調査部長兼チーフストラテジスト、2003年取締役就任。2009年専務取締役就任、現職。入社以来一貫して調査・情報部門に携わる。日本経済新聞を始めとする各紙、電子メディアにも寄稿多数。
著書は、「サブプライム 逆流する世界マネー」(実業之日本社)