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バックナンバー 6月27日号  6月20日号  6月13日号  6月6日号

6月27日号

  政治的イベントと“逃げ水のシナリオ”

記事内容


 世界を揺るがした、EU(欧州連合)離脱を巡る「英国の国民投票」が6月23日で終わった。結果(執筆時点では不明)はどうであれ、そのマーケットへの影響はいずれも短期的な上下の振れをもたらすことになるだろう。しかし今回のイベント結果は、そのこと自体(残留か離脱)が新たなトレンドを形成するというより、“ポジションの巻き戻し”の動きに留まると見られる。というのは、その先に日本の参院選挙(7月10日)、東京都知事選挙(7月31日)の結果や、米国の大統領選挙(7月の党大会、11月8日の本選挙)の行方等不確実性イベントが待ち構えているからだ。特に日本の参院選挙は、公示前の世論調査で安倍内閣の支持率が低下するなど、舛添知事問題の影響が懸念されている。安倍首相が勝敗ラインを、与党で年初の46議席(非改選を含む過半数)から61議席(改選議席の過半数)に引き上げたことも、新たなリスク要因となったといえる。こうしたなか、“逃げ水の追加緩和シナリオ”、“逃げ水の円安シナリオ”、“逃げ水の株高シナリオ”と揶揄される今日の日本株だが、マーケットの梅雨はなかなかすぐに明けそうにない。ということは、今回の反発局面(下落の場合も)は期間と値幅が限定ということか。シートベルト着用のサインは、まだ完全に消えそうにない。

  


6月20日号

  不確実性要因の「A」、「B」、「C」 プラス 「D」

記事内容


 世界のマーケットの不確実性を高めている材料としては、アルファベットの頭文字で「A~C」がいわれている。「A」(America:米国)は、6~7月のFOMC(米連邦公開市場委員会)での利上げが遠のいたことで、次は秋(11月)の大統領選挙の行方にシフト。民主党のヒラリー氏と共和党のトランプ氏政権下の政策の影響を具体的に精査(為替や税制など)し始める。「B」(Britain:英国)は、6月23日のEU(欧州連合)からの離脱の是非を問う英国・国民投票の行方。「残留」か「離脱」の決定は、投機筋によるポジションの巻き戻しで一時的な株価・為替の急変動が起こりうる。「C」(China:中国)は、中国人民元安の行方。中国当局での構造改革派と景気刺激派の政策のねじれが、景気回復を遅らせる。そして日本についての「D」(Domestic:国内)は、日銀の追加緩和(6~7月)の有無と円高の行方。さらに7月10日の参院選挙の行方。日銀の動き次第では、一時的に円安か円高に振れる。安倍首相が勝敗ラインを当初の46議席から61議席に引上げた参院選挙は、新たな火種を抱えたともいえる。2016年夏の株式市場は、こうした不確実性要因をひとつずつ消化してゆく、“我慢の相場”か。当面は、「インデックスより個別」、「分散より集中」、「中長期より短期」で、しばらくゆこう。

  


6月13日号

  期待したい、政府と日銀の節度ある協調 (パートⅡ)

記事内容


 自民党は、7月10日の参院選挙に向けた公約を発表(6/3)した。なかで、①「一億総活躍社会」を実現すること、②「消費増税」を2019年10月に再延期すること ― 等が目玉だが、そのための財源や財政再建の具体的な道筋に触れていないことも、指摘されている。この他には、今後5年間で官民合わせて30兆円の資金を「リニア中央新幹線の大阪延伸」や、「整備新幹線の整備」等に当てる方針を打ち出していることが目を引く。しかもその財源は、日銀の大規模な金融緩和による金利低下(ゼロ金利)を生かし、民間では困難なインフラ整備などに必要な資金を国が調達して融資する「財政投融資」の枠組みを使用するとしている。今はこれ以上の報道はなされていない。しかし、その資金の調達を“ヘリコプターマネー”と呼ばれる、「ゼロクーポンの永久債」発行で賄い、それを日銀が間接的に買う(節度ある協調?)としたら、大きなインパクトをもたらすサプライズ材料になろう。もしこれが実現すれば、米FRB(連邦準備制度理事会)の6~7月の利上げ観測先送りが濃厚となった今、円高を止め、財政出動による景気対策になり、株価にも効く政策となろう。ただ、その可能性は?と問われれば、「アイ・ホープ・・・」と、答えざるを得ないのが、今の心情か。

  


6月6日号

  期待したい、政府と日銀の節度ある協調

記事内容


 政府と日銀の追加政策として、市場では①「ゼロクーポンの永久債」の発行、②「貸出増加を支援する制度の創設」などが話題に上っている。①の“ヘリコプターマネー”ともいわれるゼロクーポンの永久債は、債務が増えず償還も無い国債を発行し、間接的に日銀がそれを買い取る仕組みのようだ。政府は集めたお金で地域振興券などにして国民に配るというもの。②の「貸出増加を支援する制度の創設」は、金融機関が貸出を増やしたと同額分を低金利で日銀が貸し出す仕組みで、これにマイナス金利をつけるというもの。個人的には、政府が検討している「インフラの整備に使う資金をほぼゼロ金利で民間に融資する仕組み」に注目している。政府は発行コストが大幅に低下した国債を発行し、日本政策投資銀行など政府系の機関を通じて貸し出す。これに、①と②を組み合わせ(ゼロクーポンの永久債発行と日銀の貸出支援制度を利用)、防災・減災の国家的インフラ整備プロジェクト(国土強靭化計画)として活用できれば、大規模財政出動の景気対策にもなる。ここで節度ある政府と日銀の協調が実現すれば、マーケットにとって久々のサプライズイベントになる。果たして、注目される2次補正予算の規模と日銀金融政策決定会合(6月15-16日)の結果や、如何に?

  


チーフグローバルストラテジスト
中井裕幸(なかいひろゆき)

同志社大学法学部卒。日興證券入社、同投資情報部長を経て東海東京証券入社。2000年東海東京調査センター[出向]投資調査部長兼チーフストラテジスト、2003年取締役就任。2009年専務取締役就任、現職。入社以来一貫して調査・情報部門に携わる。日本経済新聞を始めとする各紙、電子メディアにも寄稿多数。
著書は、「サブプライム 逆流する世界マネー」(実業之日本社)