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バックナンバー 6月29日号  6月22日号  6月8日号  6月1日号

6月29日号

  始まった(?)、企業と個人投資家の「新起動」

記事内容


 トヨタ自動車の株主総会(6/16)で、新型株「AA型種類株式」が承認(7月24日発行予定)された。同株は、普通株のように¬上場せず最初の5年間は売買できない。その後株主は最初に購入した価格でトヨタに取得請求でき、普通株への転換請求もできる。配当は、発行価格に対して初年度の0.5%から5年目以降の2.5%まで徐々に上がっていく。いうなれば、元本が保証され、債券のような性質を持つ新型株ということになる。このAA型種類株については、助言会社の米ISSが、経営のチェックという観点から反対を表明していた。筆者が注目したのは、仕組みの問題というよりは、企業のこの新型株式に対する“想い”だ。豊田社長は「日本の個人金融資産はほとんど株でなく預金だ。民間企業のトヨタが資本市場の幅を半歩広げる。これは、意志のある決断だ。トヨタは創業時に自動車をつくろうとした時、“一緒にやりましょうよ”という仲間がいた。これからは株主の皆様とトヨタが一緒にやりましょうよ」と、話されたという。東証が発表(6/18)した2014年度の投資部門別株式保有比率をみると、個人投資家・その他は17.3%(過去最低)と、3年連続で落ち込んだ。トヨタの新しい取り組みは、こうした危機感を背景にした企業と個人投資家の関係の「新起動」の予兆のような気がする。

   


6月22日号

  日本のビジネスモデルを変える「観光立国」の戦略

記事内容


 先週末、北海道に写真を撮りに行った。大雪山、旭川、富良野のコースだったが、驚いたことは何処も彼処も中国人観光客で溢れていたことだ。北海道では、今やバスと運転手が足りない状態だという。ちなみに私の行ったツアーは、人手不足から定年を終えたベテラン(60歳後半?)のバスガイドさんであった。そこで見たものは、噂に聞く“中国人観光客のお土産の爆買い”であった。アベノミクスの第3の矢である成長戦略は、まだその成果が現れていないものが多い。この中で、劇的な成果をあげているのが、前述の「観光」だろう。政府は、6月5日の観光立国推進会議で、「訪日客の2020年2000万人(2014年は1341万人)の目標を前倒し、訪日客の消費額を4兆円(同2兆278億円)に倍増、全国で400万人の雇用創出を目指す」行動計画をまとめた。海外観光客増に伴うインバウンド(外国人消費)需要は、日本経済を引っ張る重要な基幹産業として位置づけられ、実現の可能性が最も高い成長戦略といえよう。これだけ観光客が増加すると、日本の製品やサービスを体感して本国に戻った彼らが、日本を見直す好循環も期待できよう。今年6月末に「日本再興戦略」の改訂版が発表される。ここで注力される日本の先端技術は、将来の訪日客へのアピールにも繋がろう。

   


6月8日号

  「もうはまだなり、まだはもうなり」(相場格言)

記事内容


 5月相場は、「セル・イン・メイ(5月に売り逃げろ)」とはならなかった。日経平均は、27年ぶりの12日連続上昇(5/15~6/1)、東証1部の時価総額が607兆円(6/1)と25年ぶりに過去最高を更新した。そして円相場は、125.05円/ドルと12年半ぶりの安値を更新(6/2)した。何故、こうしたことが起きたのか。これは、5月22日のイエレンFRB(連邦準備理事会)議長発言から、先送りされた米国の利上げが前倒し(9月~年内?)になるリスクが浮上したことが大きい。このため、4月に史上最高値まで買われたASEANなど新興市場から、リスクが相対的に少なく株価が割安な日本市場に外国人投資家がシフトしたというのが実情ではないか。となれば、現在の動きは期間限定で、これまで「1-3月の延命相場」が起きたように思う。6月は、12日にメジャーSQ(オプション・先物特別清算指数)、16・17日にFOMC(米連邦公開市場委員会)、18・19日に日銀金融政策決定会合、6月末にギリシャ支援の交渉期限 ― など、ビッグイベントが目白押しだ。中国では新規公開株市場が波乱の様相を見せ始め、バブルの警鐘が聞こえ始めている。日経平均の2万0833円(00年4月高値)接近、124.14円/ドル(07年6月安値)突破は、それなりに意味のある節目でもある。6月相場は、「遅れた梅雨入り宣言」が必要なのかもしれない。

   


6月1日号

  「PBR1.5バズーカは健在なり」(パートⅢ)

記事内容


 2015年3月期の決算発表は、企業の稼ぐ力が高まったことを示す内容であった。なかで、純利益が1000億円を超えた上場企業が61社と、過去最多になったとの報道(5/22)もあった。そこで、この純利益のベスト20社のランキング入り企業のPBR(株価純資産倍率)を調べてみて、驚いた。というのは、純利益2位の三菱UFJ(8306)のPBRが0.83倍、3位の三井住友FG(8316)が0.82倍、5位のみずほFG(8411)が0.77倍、6位のホンダ(7267)が1.11倍、7位のNTT(9432)が1.06倍、8位の日産自(7201)が1.10倍、9位の東電(9501)が0.88倍、といった具合に、純利益上位10社の約7割が東証1部の平均PBR以下という状態だったからだ。さらに、12位の三菱商(8058)が0.80倍、13位の第一三共(4568)が1.27倍、14位の三井物(8031)が0.75倍、16位の伊藤忠(8001)が1.05倍と続く。東証1部の時価総額が1989年12月のピークを超え、一部でバブルの声もある。しかし、金融政策決定会合の後の記者会見で、黒田日銀総裁は「金融資産市場で過度の動きは観察されていない」と答えていたのも頷ける。今市場で起きていること、それはこれまでの株価の下支え指標であったPBRが、上値ブレイクの指標へと変化し始めたことが大きいように思う。

   


    
チーフグローバルストラテジスト
中井裕幸(なかいひろゆき)

同志社大学法学部卒。日興證券入社、同投資情報部長を経て東海東京証券入社。2000年東海東京調査センター[出向]投資調査部長兼チーフストラテジスト、2003年取締役就任。2009年専務取締役就任、現職。入社以来一貫して調査・情報部門に携わる。日経CNBCに出演。日本経済新聞を始めとする各紙、電子メディアにも寄稿多数。
著書は、「サブプライム 逆流する世界マネー」(実業之日本社)