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バックナンバー 5月30日号  5月23日号  5月16日号  5月9日号

5月30日号

  「消費増税先送り」表明と株式市場

記事内容


 安倍首相は、来年4月の消費税率10%への引き上げの是非について、「伊勢志摩サミット(主要国首脳会議)」での話し合いを踏まえ、そう遠くない時期に「先送りを最終判断する」構えのようだ。もし消費増税の先送りとなれば、低迷する個人消費が一段と落ち込むのを防ぎ、景気の下支えに繋がるとみられる。こうしたなか、各調査機関は消費増税の先送りを前提とした経済見通しを発表し始めた。それらをみると、消費増税の駆け込みがなくなる16年度の実質GDPの成長率(前年比)を若干押し下げ、反動減がなくなる17年度の押し上げに寄与している。ちなみに、東海東京調査センターの場合は、16年度が+0.7%(消費増税実施の場合+1.0%)、17年度が+0.9%(同+0.0%)の予想だ。前回、安倍首相が増税先送りを表明した2014年11月18日の局面では、その後12月14日の衆院選挙で自民党が圧勝したこともあり、大幅な株高に繋がったことは記憶に新しいところだ。では、今回も同じパターンで“2匹目のドジョウはいるか?”だが、当時と現在の投資環境では世界経済や為替や株式のモメンタムが変わってしまった(米国の利上げや中国の人民元安リスクなど)のも事実だ。今回は、その効果と限界をシッカリ見極めての対応が必要になろう。

  


5月23日号

  "黒田マジック"の 『3度目の正直』(パートⅡ)

記事内容


 5月13日に黒田日銀総裁の話を聞く機会があった。黒田総裁は「原油価格と新興国の不透明感がある中でのマイナス金利の導入(16年1月)になったので、その効果が遅延している。しかし、国債の金利や住宅ローン金利も下がっており、この動きはいずれ実体経済に波及する」と強気の姿勢を崩していなかった。日銀の政策の効果が出ていないのは海外要因のせいだ、とも聞こえた。また、「我々はフォワードルッキングで臨む。マイナス金利と量と質の3つの次元の対応は、強力なアプローチだ。量も質もまだ余地がある」。この発言は、そう遠くない時期の追加緩和実施を示唆したものとして、多くの人は受け止めた。そして今回の黒田総裁の最も印象的な言葉は、「我々は金利を上げるために金利を下げている」であった。最後の「日本のリスクは、大半が為替や原油など海外要因だ。政府が2%の持続的な成長を目指すためには、構造改革や成長戦略により潜在成長率を引き上げることだ。そのためには、政府と(日銀は)節度ある連携が必要だと思う」。この言葉は、世界経済が不安定な時は、日銀の金融政策だけでは限界がある。今後、政府と日銀が連携をして政策対応をしてゆく可能性がある、ということなのだろう。となれば、追加緩和の時期はやはり6月か。

  


5月16日号

  "黒田マジック"の 『3度目の正直』(?)

記事内容


 4月27・28日の日銀金融政策決定会合は、追加緩和期待が強かったものの、ゼロ回答(見送り)であった。このため、市場は失望売りの株安で大きく反応した。しかし、今になって思うと何も無かった方がむしろ良かったのかもしれない。というのは、翌日の29日に米財務省が「為替報告書」で日本を為替監視リストに入れ、円高がさらに加速したからだ。「市場との対話」を問題視する向きもあるが、今回の日銀は「市場の催促に押されての政策変更より、もっと効果が期待できるタイミングを選んだ」ように思う。それは、前回このコーナーでも指摘した「財政出動と一体となった金融政策」を目指しているからではなかろうか。そう考えると、日銀の追加緩和期待は消えたのではなく、今も生きているといえよう。その時期は、財政出動の概要が明らかになる5月26・27日の伊勢志摩サミットから6月15・16日の金融政策決定会合、遅くとも「展望レポート」が発表される7月28・29日の会合までには踏み切る、とみるのが妥当ではないかと思う。5月18日発表の1-3月期の実質GDPの伸び率は、2期連続のマイナスリスクもでてきた。しかも、17年3月期の企業収益の見通しは2年連続の経常減益が予想され、今や一刻の猶予もない。ここは“黒田マジック”の『3度目の正直』に期待したい。

  


5月9日号

  「ヘリコプター・マネー」について考える

記事内容


 4月某日に金融セミナーを聴講していると、「ヘリコプター・マネー(空から降るマネー)」と言う言葉が飛び出し、正直驚いた。この言葉は、かつてベン・バーナンキ元FRB(米連邦準備制度理事会)議長が、日本にデフレ対策を提案した際に有名になった(当時“ヘリコプター・ベン”と呼ばれていた)のを思い出したからだ。この言葉は、そもそもノーベル経済学賞受賞者のミルトン・フリードマン氏が提唱したもので、今は「政府の景気刺激策の財源を中央銀行が支える」意味で使われているようだ。ECB(欧州中央銀行)のドラギ総裁は、3月の政策決定後の記者会見でこのことについて尋ねられた時、「興味深い考えだ」と述べ、一部に大きな反響を呼んだ。一方、日銀の黒田総裁は「全く考えていない」と、4月の国会(衆院財務金融委員会)での質問に答えていた。しかし、こうした質問の受け答えを見る限り、ヘリコプター・マネーの議論は静かに始まっているのだろう。もちろん、このことは中央銀行による「財政ファイナンス」の問題等、実現に課題が多いのも事実だ。しかし日本では、熊本地震の対策で膨らむ大型補正予算(10兆円以上?)の財源をどうするかが喫緊の問題になる。ここは、政府と中央銀行がタッグを組んだ新・ヘリコプター・マネー政策が、今こそ必要なのではなかろうか。

  


チーフグローバルストラテジスト
中井裕幸(なかいひろゆき)

同志社大学法学部卒。日興證券入社、同投資情報部長を経て東海東京証券入社。2000年東海東京調査センター[出向]投資調査部長兼チーフストラテジスト、2003年取締役就任。2009年専務取締役就任、現職。入社以来一貫して調査・情報部門に携わる。日本経済新聞を始めとする各紙、電子メディアにも寄稿多数。
著書は、「サブプライム 逆流する世界マネー」(実業之日本社)